2017年05月15日

悪魔のトリセツ No.72 靴を脱ぐ生活だからこそ。

履き物は、「閉塞性履物」と「開放性履物」に分かれます。
靴は「閉塞性履物」で、足を覆うように作られています。草履やサンダルなどの「開放性履物」は温暖な地方で発達したのに対し、「閉塞性履物」は寒冷地で発達しました。

西洋では、居住空間でも靴を履いたままなのに対し、日本では、昔から主に「開放性履物」である草履など、足の甲を覆っていない履物が使われてきました。住居が高床式で床下から湿気を逃す構造であり、生活空間では履き物を脱ぐため、着脱しやすいことを優先した履き物が日常的に使われています。(それでも、旅に出るときや農作業など、長時間歩く時は、履き物と足首に紐を結わえるサンダルの1種である、「草鞋(わらじ)」が使われていました。)

靴が日常的に使われるようになったのは近年のことですが、靴を着脱するライフスタイルは引き継がれています。

つまり、歩くことを前提に造られている靴を、脱ぐことを前提に使っています。
ここに、足のトラブルの一因があります。

さて、「閉塞性履物」である靴。爪先が閉じているため、足の趾(ゆび)も閉じ込められています。靴は、足の趾にとって逆境と言えます。前回に書いたように、靴底に添って立ち上がる靴の甲革の側面が、足の趾の動きを邪魔してが上手く動かせないのです。特に、パンプスやスリップ・オンは趾も使って足を靴に固定するのでなおさらです。

しかし、靴のお陰で助けられていることが多々あります。

直接、地面に触れることがなくなり、感染症のリスクを劇的に減らすことができました。

暑い夏の昼間に、焼けたアスファルトを裸足で歩くと火傷してしまいます。 サンダルと違って、甲に日焼けの痕も付きません。

足の裏に、しっかりした底が出来て、歩く力を容易に地面に働きかける事ができるようになりました。

靴のデザインは、そのときの気持ちを表すアイテムとなりました。お悔やみの気持ち、お祝いの気持ち、お客様への感謝の気持ち、その他、諸々。

靴を脱ぐ、脱がないの習慣の違いからおこるリスクとメリットを良く理解して、上手に使いわけましょう。

上級シューフィッター 永田聖子

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2017年05月10日

高齢者の足と靴   

気持ちの良いゴールデンウィークでしたが、楽しく、過ごされましたでしょうか。
天候がいまひとつの春の始まりでしたので、桜や藤、牡丹の咲く時期も例年より遅くなりました。
電車に乗り、足元を見ると紐靴、ブーツタイプ、甲が隠れるくらいのスリッポンタイプなど、以前に比べて随分、変わってきました。
「こんな靴、あんな靴を履いていたら、いつか困るのではないかしら」と心配していましたが、いつのまにかしっかり紐を締めて靴を履いている方が増えています。
電車の路線によっても個性があるようです。
すぐ近くの電車に乗ることが、多いので、その電車で見た感想という事になります。
そして、その電車に高齢者の方の姿が減ってきているように感じます。

さて、高齢になってから、リュウマチを発症する方、以前からリュウマチであったけれど、段々、歩きづらくなった方がおられます。
当然、主治医の先生に定期的に診ていただいておられます。
特に悪くなっているのでは、ないけれど、靴が合わないという場合があります。
「痛くて履けない。」「新しい靴を作ったばかりだけれど、痛くて履けない。」と言われる事は多々あるのです。
「以前、履けた靴が履けない」
リュウマチでなくてもよく耳にする言葉です。
足の変化は、それぞれに違い、私達靴屋は勿論、ご本人にも、分かりづらい時があります。
足裏の部分が痛くて履けないという時は、中敷での調整をさせて頂くことが多いのですが、アウトソールでの加工をする事もあります。
中敷加工だけでは、痛くて履けない場合です。
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それだけではなく、靴のタン(ベロ)に厚みをつけることもあります。
高齢者の方に多いですが、体が痩せていった時、足もかなり痩せてしまいます。
体よりも先に、足が痩せていく方もおられます。
体の変化は、足にも影響しますので、ドンドン履きにくくなり、歩きにくくなる場合があるのです。
「足が、悪い」「足がよくない!」のではなく、何かできることを一緒に、探してみましょう。

技術が必要になりますが、熟練した技術者が育った頃、そろそろ退職?ということも多いようです。
技術を大切にしていく社会になれば、足の健康も体の健康も守れるはずです。
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大切に靴を触り、心地よく履いて頂くように工夫を重ねます。

シューフィッター 池川成子



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2017年05月05日

利き足と利き手

左足は方向を決める支持足、右足は推進足といわれます。 そのような違いもあってか、履いている靴のトウ先端[本底部分]の磨耗を見ると左右で違うことがわかります。 左の靴は、本底の先端の中央が、右の靴は中央より内側が減っている人が多いようです。 特に右足は蹴り返しの最終、外側に蹴られていることが多く、雨の日にスラックスのすそにかかる泥ハネが左右で違ってくることが往々にしてあります。

ところで、靴のソールの摩耗をみて、「利き足はどちらですか?」とうかがうことがある。  とっさに即答する方は少なくしばらく間をおいて返答される。 「利き手は?」とうかがうと右手または左手と瞬時に即答されるが足は混乱することが多い。 それは当然なことで、片足を使うにはもう一方の足が床面に接地する必要があるからです。 そこで人によっては接地している足が利き足と思いたくなります。 手と違い足は両足が共存して機能する。 こうみると足は手ほどの器用さがないものの、左右が同時にうまく動いているために動きの解釈が本当に難しい。 
本題の利き足について、ボールを蹴る足を利き足としているものの一般にはまだまだ周知されていないのが現実です。 「利き足は?」とうかがったら即返答されるような社会になってほしいものです。
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上記の写真は地下鉄のコンコース、「左側通行」とある。 わざわざ掲示しているところを見ると、この場所は事故があったか又はよく混乱する場所かもしれない。 足や靴の研究者は、駅など多くの人が交わるところは左側通行を徹底することが好ましいと語っている。 何かトラブルが発生すると人の流れが瞬時に乱れパニックになることがあるからです。 エスカレーターなどはもっと危険になる。 身体の生理に基づいた行動科学が必要という話です。 

上記の話を総合すると、利き足の反対側方向に行くほうが歩きやすいということになる。 しかし全ての方がそうとは言えないところが面倒なところである。 福井県にある永平寺本山では「左側を歩いてください」とわざわざ書き記しをしています。 ひんやりとした静かな廊下、左側を歩くと自分の気持ちがいっそう落ち着いてくるから不思議です。 昔の人は身体の生理を熟知していたということかもしれません。
シューフィッター 【大木 金次】
posted by シューフィッター at 00:00| Comment(0) | 足と靴の環境 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする