2011年03月15日

同じ靴(品番・サイズ)でもフィット感が違うのは普通

フィッティングをしているとき「もう一足同じ靴を試してみますか」と申し上げることがある。 そのような時は靴を装着するときの靴べらの感触が左右で違う場合です。  靴べらで履かせて上げていると手の平に感じるフィット感が微妙に違うことは本当に多いものです。  しかしそのようなアプローチをしても、ほとんどの顧客は「履き心地は同じことでしょ」と何の疑問も抱かずに返事が返ってくる。  そしてその後同じ靴を試して頂くと、「同じ靴ですか?」「どうして感じが違うのか?」と様々なことを質問をされ、ときには同じサイズかを確認する人さえいる。 

その要因は
革は一枚づつ伸びかたが違う・左右でも伸びかたが違うことがある・アッパーのつり込みには手を使うが左右で力の入り具合がことなること・靴の保管が長期になるほど革は縮むことがある・ライニング(裏材質)のばらつき・接着剤の塗り方・また靴は手作りの範囲が多く作る人が変わると違いは大きくなる などが挙げられる。 

以上のように様々なことがあるが、それは目で見てもほとんど解らない範囲である。 しかし足は非常に敏感であるため、履いてみると瞬間に違いを感じるのです。 靴を見ても違いはまったく解らず靴べらから伝わる手の平の感触が頼りになる。 

同じデザインで同じサイズが二足あれば、始めから同時に出庫をして履いて頂くようアプローチを促すことです。  このようなサービスは靴ならではのホスピタリティに結びつくものである。
シューフィッター 【大木 金次】  
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2011年05月20日

腰回り(踵)を支える靴型と月型芯

DSC00204 値札を塗りつぶす.jpg

売り場で靴を見ていると、踵を支える腰回りの形状に選ぶほどの種類はほとんどない。 非常に残念なことである。 実際は形状の違うものが少しはあるが、靴を選ぶ人にはほとんどその区別がつかない。  
写真をみると一目でわかるが、左側の腰回りは底面になるほど太くなっており、踵回りの形が見え、安定性のあることが解る。 その点右側は小さく細い骨格に向くようである。 

日本人は同一民族であるため、踵の形状に欧米人ほどの違いは少ない。 それでも踵のカーブの少ない人が多く脱げやすいと感じている方が沢山いる。 また踵は感覚が敏感なため靴合わせに慎重な人が多い。   

体重があり甲高の人は腰回りも太い方が多く、立つと踵部に荷重がかかり踵の下部が膨らむことが多い。  そこに左の靴のように立体的な腰回りのものがあればしっくりとした履き心地が得られる。
靴を選ぶ際、デザイン選びの中心は前足部になっており後足部は後回しになっている場合がほとんど。 しかし靴を作る職人はヒール部分に大変な神経が払われているのです。

腰回りは靴型から始まり月型芯の開発も必要、また靴のつり込みも熟練を要するため容易に改善されにくい。 その上腰回りを急に変えると靴擦れの発生を生みやすく、腰回りの改善に簡単に手を付けることは容易ではない。 
しかし大切なことは靴のフィット感の向上にある。 そのために改善を行ったら、腰回りの違いを解説したタッグを付けることも大事なことです。  

靴をバイイングする人は腰回りの形状にもぜひ関心を持ってほしい。 
写真の靴はインポートであるが国産でも種類が多くなることを望みたい。
  
シューフィッター 【大木 金次】 
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2011年05月30日

靴のフィッティングは「技」から「道」へ

ロボット研究で第一人者の森政弘氏(日本ロボット学会名誉会長)は今後のロボット開発を「技術」から「技道」へと格上げをしている。 「物作りは人作り」という言葉から出たもので中学校ロボコンの合言葉になっているという。   このような考え方は実に日本的でロボットは人の研究であると言われる所以であり、その研究は心の道に行き、物作り三昧に行きつくと語っている。

ところでロボットの研究と靴のフィッティングにどのような関連があるのか?  そのことは私にも不安なところがあるが、フィッティングは靴べらを持つ手の感触から始まり全身を総動員して足に合った靴選びに向かう。 そのようなフィッティングをしている時間が長くなるにつれ、自然に顧客の顔を見てしまい、心から満足が得られてるかということに視点がいき、それが私の喜びになっている。  

結局フィッティングが技から心の道に自然に入っているようなのです。 その内玄関で靴を脱ぎ、その靴に向かい「〇〇さんありがとう」などとペットに語りかけるようにニッネームで感謝を言う人が現れるかもしれない。 

靴選びをするためには笑顔で店に入ることを啓蒙しているが、フィッティングの始まりはお互いのいい気持ちの交換から開始されると結果は良になることが多い。 靴の出来栄えや巧みな手さばきのフィッティングから最終は顧客の心にたどり着く。  足に靴が合うことはたやすくはないが、さらに難しいのは顧客の心理にぴったりはまること。 このようなことは靴だけに限らないが靴は特に難しいと誰もが考えているようである。   シューフィッティングの要は足を経由して心の問題になる。  今後のフィッティングは「技」から「道」に入りたいと思っているのです。 シューフィッター 【大木 金次】
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