話の主役は「こゆび」です。 靴の中でがんばっている割合に語られることが少ないのは残念。 その要因はトウ(靴のつまさき部分)で隠れておりこゆびの働きが見えにくいからでしょう。
こゆびへの関心の少なさは次のようなことでわかります・・つま先の幅に対して細すぎるトウを好んで購入するという現実です。 こゆびの働きに関心を持つことで、軽快に歩けると同時に歩幅も広がることを知っていただきたい。
ぞうきんをタテ絞りすると「こゆび」に力がよく入る、反対にヨコ絞りをすると力が入りにくい。
手と足の機能は似ていると言われているが、足の機能は見えにくいため、足にかわって手の仕事ぶりを記してみました。
皆さんもすでに経験済みのことですが、ぞうきんをタテに持って絞るとよく絞り切れます(写真) その反対に横に持って絞ると意外に絞り切れません。 この違いはこゆびの働きにあり、タテに持つとこゆびに力が入ることで、すべてのゆびに力がよく入ります。 ぞうきんをタテからヨコに持ち換えると、こゆびは浮いたままですべてのゆびがあまり働かない・・つまり力が入りにくい。
このような簡単な事例で、こゆびの働きに違いが出ることに注目願いたい。
そこで狭い靴のトウの話になりますが、狭いトウでつま先がせめられると居場所がないため浮いてきます。 そのようなことは、中敷きを外してみるとこゆびの跡が少ない。 またフットプリントをとると、こゆびの跡が見当たらないということが往々にしてあります。
こゆびが浮くという事例は雑巾のヨコ絞りに似ており、力が入りにくいことを示します。
こゆびに力が入りにくいと静かな歩調になりやすい。 力はこゆびから始まると言ってもいいようです。
フィッテングでもっとも重要なことはこゆびが活躍できることです。
雑巾絞りの話の発端は、夏場に雑巾を洗って一晩つるしておいても乾燥しなかったことです。 そこで絞った担当者に絞り方を聞いたところヨコ絞りをしていたのです。 雑巾を絞る時代は終わったようですが、手つきからみえる足のこゆびの力、それはわずかなことですがとても大事なことです。
シューフィッター 大木金次