使用中の靴の中に手を入れてみると、時には生温かいものを感じることがあります。 それは決していい感触とは言いがたいようですが、いろんなことに気づく始まりと言ってもいい。 靴の販売員は履いて頂く前に、靴の中に手を入れ確認してからお客様に差し出していますが、購入後も靴を履くときは毎回手を入れてから履くよう習慣にしてほしいものです。
写真は靴を分解した後のアッパー(甲)裏です。
分解したきっかけは、お買い上げ後に処分を依頼され試しに手を入れてみたもの。 この靴は、トウ(靴のつま先)が広い割合に厚みが少なく、アウトドアっぽいデザインと革の風合いで、長年ベストセラーに近い売り上げを得ている。
しかし「ふたを開けてみると」という言葉どおりで、内部は摩耗でかなり傷んでいる。 不思議なことに、アッパー裏の擦れで履きにくい、また痛いといった申し出は皆無でした。 ただソックスを脱いでみるとどうでしょう。 おそらく足ゆびの上部にタコができていると思われるが、それでも使用者は何の疑問を持たないで使用している。
そこでちょっと想像してみました・・・この靴を他の人が履いたらどうでしょう? おそらく足を入れた瞬間に違和感を感じて、靴の中に手を入れ探ってみるのではないでしょうか。 その感触から「これでは履けない」となるでしょう。
写真を見ていると、毎日のわずかな靴との摩擦で進行したもので足は気づいていない。 このような状態を発見するには「手」を使いなぞってみる以外になさそうです。
写真から足のゆびは背屈と底屈の連続であることに気づく。 しかしそのような動きを可能にする「つま先余裕」に関心を持つ人は非常に少ない。 なぜ「つま先余裕が必要なのか?」という啓発の必要性を感じます。 足ゆびの長さや太さ高さなどのサイズは人さまざまで、すべての方が写真のようになるとは言えませんが、確かなフィッテングの必要性を感じます。
歩幅をしっかりとるには十分なゆびの背屈が始り?と言ってもいい。 足ゆびは手指と同じで五本に分かれており力が入る。 できれば手のように何の障害もないことに限るが、靴を履かなければ何もできない。 そこで靴の難しさに気づいて頂きたいのです。
トウ先の厚みの薄い靴を選ぶときは、ゆびの上下が軽くできるか? 歩幅が伸びやすいか? さらに蛇行しながら軽く歩きこなせるか?など、購入前にゆびに神経を寄せながらチェックすることを勧めます。
シューフィッター 大木金次