「楽なパンブスが欲しい」と言われると、
困ってしまいます。
「らく」とは、「リラックスしている」という感じの意味でしょうね。
リラックスするとは、体の力をゆるめて、くつろいでいる状態でしょう。
パンプスは、その意味で、楽をするための靴ではないのです。
「楽なパンプスなんてありません」と答えると、がっかりしますか?
じつは、くつろいだ状態とはまた別に、
「楽」な状態があります。
自然と体幹に力がみなぎって、快くふるまえる状態も、「楽」です。
だから、「楽なパンプス」の答えは、
私にとって、ハイヒールです。
身長150センチ余りの私の好みは、8〜9センチくらいです。
お腹も背中も首も膝も気持ち良く伸び、快適に歩けます。
「楽しい」感覚もあります。
これは、下駄も、長靴も、適切に紐を締めた紐靴も、素足も靴下も素足も知ったからこその幸せだと思います。
だから、長時間はパンプスを着けません。立ち働きをするならハイヒールは着けません。
「楽なパンプス」を求める人は、もしかしたらいつもパンプスを履いていたり(あるいは、履かされていたり)、靴下やスニーカーの紐を適切に使わなかったりしているのかも知れません。
まだまだ、日本に、靴の文化が伝えられていないからだと思います。
それをお伝えするのは、靴と足について学んでいる、シューフィッターの使命のひとつだと思っています。
靴は優れた道具です。
けれど、日本で生活している皆さん、どうか、素足を手放さないでください。
そこにも、悪魔のトリセツがあるのです。
上級シューフィッター・ウォーキングマスター・レザーソムリエ ・ヨガインストラクター
永田 聖子