私たちの身体は本当に良くできていると思います。環境に適応する力も優れています。
ヒトは未完成のまま産まれて、環境を学習しながら発達していきます。
だから、発達の途中は、たくさん学習して、この先の長い人生で何があっても対応できるよう、身体を作り、身体をコントロールする技術を身に付けていきます。
成長期ほどではないにしろ、成人しても適応力があります。
すべての暮らしや仕事に置いて、安全に、動きやすいよう、身体は適応を続けています。
日本の伝統的な生活スタイル、つまり家に帰れば履き物を脱ぐ、床上に暮らす人たちと、
家の中でも土足で暮らす人たちの、
適応の仕方も違うはずです。
大きく左右するのは、履き物の使い方でしょう。
土足生活の人にとって、履き物は身体の一部であり、大切な道具です。
家で寛ぐための履き物と、出掛けるときの履き物を使い分けています。
赤ちゃんが初めて歩き出すときにも、早くも履き物が必要です。
足の発達を遮らないような形状の靴が必要で、成長が速いので、次々に履き物の大きさを変えていくことになります。
土足スタイルでは、家で寛ぐための履き物は、歩きやすいようにはできていません。寛ぐためですから。
そして、出掛けるときに着ける靴はきれいな姿勢で歩けるようになっています。
洋服は「肩で着る」ので、姿勢が崩れて肩の位置も崩れてしまうと、洋服のデザインが台無しです。
出掛けるときの履き物は、洋服にコーディネイトして爪先を美しく整える、「メイクアップ用品」になるでしょう。
寛ぐ「オフ」ではなく、
装う「オン」です。
さて、日本の伝統的な生活スタイルにとって、寛ぐための履き物は存在しないことになります。家では履き物を脱ぐからです。
日本での靴はすべて、「メイクアップ用品」ではないでしょうか?
私たちが探し求める「楽な靴」とは、素足のことを指すのではないでしょうか?
私たちにとって、外出用の靴はすべてメイクアップシューズと呼ぶべきかもしれませんね。
上級シューフィッター・ウォーキングマスター・レザーソムリエ ・ヨガインストラクター
永田 聖子