「利き足はどちらですか?」と伺うと、返事に躊躇する人が多いようです。 そのとき手をイメージしながら考えている人がほとんどで、手のように大方が右ではとなる。
そこで手と違い、右足を使うには左足がしっかり安定していなければなりません。 そこで右足を運動足、左足を支持足と言い、ボールを蹴る足を利き足とも呼んでいます。
足と手を比較すると同じようですがまったく次元が違うことになります。 例えば右足が効果的に働くには、バランスのとれた左足が合ってこそ。 役割の違う左右の足に左右同じ靴を購入しているのが現実です。
そうすると履きやすい靴になるには「履きならし」という時間が必要になります。 履きならしは身につける洋服の着ならしにも似てますが、靴ほど大げさなことではありません。 靴の履きならしは大事でそのとき感じるのが左右差です。
履いているうちに、靴の摩耗に少し左右差が生じてきます。 「どうして片方の靴だけが減っていくの」という申し出を受けることがあります。 その多くは上記のように左右の足の働きが違うところにあるようです。 ところが靴は左右が同じように摩耗してほしいと思っている人が多いようです。 ただ靴の摩耗を他人から指摘されると、とてもいやな気分になることがあります。
中にはソールの交換など修理をすると自分の靴ではないのでは?と思う人がいます。 靴の修理ほどむずかしい仕事はありません。
今回は非常に些細なことを記しましたが、靴に左右差が起こり「この靴は履きやすい」という評価をいただくようです。
靴の出来栄えは左右が全く同じ、しかし店頭で左右差が見つかれば購入する人はおりません。 写真は左右差がないことを顧客の前でチェックしているところです・・・靴って不思議な履きものです。 なお靴に左右差が大きく出るときはシューフィッターに相談をしましょう。
玄関に脱がれた靴を見ると、曲げジワの襞(ヒダ)一本一本にも左右差がみえる、それを称して「靴はその人の人生そのもの」と語った人がいました。
シューフィッター 大木金次