みなさん、こんにちは。
毎月1日は、「悪魔のトリセツ」です。
今回は、「悪魔」と呼ばれるパンプスではなく、紐靴の話題です。
さて、みなさんのお家の玄関には、椅子はありますか?
我が家は、昔ながらの古い家で、通り土間と、座敷に上がる手前に高い「かまち」があります。
「かまち」から、庭履きの「つっかけ」に降りて、履きたい靴を選んで履き替えています。 靴べらを使ったり、通り土間に置いた椅子に腰かけて、踵をトントンして、ゆっくり紐を締めたりできます。
しかし、まだ靴のを勉強するまでは、スリッポンを爪先トントンして履いていたものです。
ところで、バリアフリー仕様のお宅が多い昨今、段差の少ない低いかまちから、立ったまま直接、靴に降りて履くスタイルのお家も多いことと思います。
それに加え、日本では、たいていのお家は出掛ける前に靴を着けるスタイルなので、靴を着ける時間も計算に入れなくてはなりません。 急いで出掛けなくてはならないとき、うっかり靴の踵を踏んだり、紐を結べないのは、よくある事でしょう。
もともと靴は、あまり脱がないのが前提です。西洋では、出掛け先で、靴を脱ぐ必要が無いからです。
着脱に少し手間がかかりますが、歩きやすさのメリットの方が大きいのです。
その手間を惜しんだばかりに、身体に余計な負荷をかけることになってしまうとは、私も知りませんでした。
靴は、西洋で、家に入っても「靴を脱がない」で過ごす生活に合わせて、長い時間をかけて発展し、ほぼ完成された履き物でした。
それなのに、高度成長期に一気になだれ込むように日本に入ってて来たので、全く逆の「靴を脱ぐ」文化に馴染む間もなく普及してしまいました。
その事を、私たちのように靴に携わる仕事をしている人も、一般ユーザーも、いつも心に留めて置いてほしいと思います。
玄関に、しっかりした安全な腰掛けを置くスペースがあれば、是非、試してください。 出掛ける時間に余裕をもって、ゆっくり腰かけて、足の踵を靴の踵に密着させるよう、トントンしてください。
足の土踏まずは、少しくびれています。そこを目安に紐をキュッと締めて下さい。
足にきっちり装着された靴の歩きやすさ、5本の趾(ゆび)が自由になる快適さは、一度体験すれば癖になりますよ。
普段から、趾を自由に使える靴環境にあれば、たまにパンプスで爪先をキリリとメイクアップしても、回復しやすくなります。
これも、「悪魔」と呼ばれる靴の、取り扱いのコツのひとつです。
上級シューフィッター・ウォーキングマスター・レザーソムリエ 永田聖子