2017年05月01日

悪魔のトリセツ No.71 ソコの話

靴にサイズ表示がありますが、それは、言わば「ヌードサイズ」表示です。

日本のJIS規格に基づいた表示の靴に「25」と書いてある場合、足長が248ミリ〜252ミリの人が足を入れて、少し先に余りが出るサイズなので、靴の中の長さの表示ではありません。それは、260ミリかも知れないし、280ミリだったり、もっと長いも知れません。
足囲も、「3E」と書いてあるとき、その靴の木型のボール位置(おやゆびとこゆびの骨のつなぎ目側の甲の骨の先端の、一番出っ張っている所)の周径の事で、幅ではありません。
幅の細い3Eや、幅広のEもあります。

トウボックス、つまり、くつ先の前芯(さきしん)の部分の厚みも、表示がありません。

足の中ほどから踵回りにかけての大きさも、表示がありません。

足囲と足長は、靴を足に合わせる時の、最も大切な情報の一つですが、それだけでは足りません。
その、表示されない情報の一つが、爪先の形です。
靴の上から見るとき、たいていの靴には紐や飾りなどが付いていて、アウトラインがよくわかりません。爪先をタイトに小さく見せる工夫がしてあるものは、なおさらです。

そこで、私達シューフィッターは、お客様の希望に合わせて靴選びをお手伝いするとき、足長や足囲だけでなく、靴底の形など、表示にない情報を参考にします。
このように、シューフィッターだけでなく、靴の販売をしている人は、経験や勉強をして、表示されていない情報を、靴から読み取る努力をしています。

ところで、靴は靴底の形に合わせて、甲革(アッパーと呼びます)が形作られることになるので、その靴を履くということは、そのような形に足の形を整える、という事になります。
爪先をほっそり見せるためには、靴底の形を細く作れば良いのですが、そうすると、足のゆびは動きにくくなります。
例えば、幅の狭い3Eの靴は、スタイル良く見えますが、幅の広い足に対して、そのままでは爪先が窮屈で、動きにくくなります。その狙いは、甲の高い人が履きやすいようにということでもありますが、幅の広い足をほっそり演出することです。足を入れると、靴の幅は横に引き伸ばされ、潰れてボール部が低くなり、あしのゆびが動き回るうちに、革が馴染んだり伸びたりして、底の形から身体の必要な部分が必要なだけ、「こぼれて」いきます。しかし、底の形は決まっているので、爪先の芯の入っているトウボックスの形は変わらないため、ほっそりしたイメージは保つことができます。

身体の形と靴底の形の相性があるので、履き馴染むまでの時間や、動きやすいかどうかは、それらの相性に因って異なります。自分の身体の形と違う物ほど、慌てないでゆっくり時間を掛けて馴染ませるよう、心掛けて下さい。


私たちは、お客様の着用されるTPOや、 歩き心地や履き心地のお好みなど、様々な条件をお尋ねしながら、お店の在庫品の中からそれに近い物を選んで提案しています。
しかし、何と言っても「見た目」は大切。自分の理想の爪先の形に目を引かれますね。その場合、靴の形に足を合わせる事になるので、いつもの靴に比べると、機動力が落ちたり、苦痛が増したりすることを覚悟しなくてはなりません。それを踏まえた上で、履き替え用の楽な靴を持って出掛けるなどの工夫をおすすめします。

それでも、「足に合う靴」より「足の形と違う靴」こそ、履きたい靴ではありませんか?

靴の裏を見てごらんなさい。あなたの理想の足の形が、そこにあります。

上級シューフィッター 永田聖子
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2017年05月05日

利き足と利き手

左足は方向を決める支持足、右足は推進足といわれます。 そのような違いもあってか、履いている靴のトウ先端[本底部分]の磨耗を見ると左右で違うことがわかります。 左の靴は、本底の先端の中央が、右の靴は中央より内側が減っている人が多いようです。 特に右足は蹴り返しの最終、外側に蹴られていることが多く、雨の日にスラックスのすそにかかる泥ハネが左右で違ってくることが往々にしてあります。

ところで、靴のソールの摩耗をみて、「利き足はどちらですか?」とうかがうことがある。  とっさに即答する方は少なくしばらく間をおいて返答される。 「利き手は?」とうかがうと右手または左手と瞬時に即答されるが足は混乱することが多い。 それは当然なことで、片足を使うにはもう一方の足が床面に接地する必要があるからです。 そこで人によっては接地している足が利き足と思いたくなります。 手と違い足は両足が共存して機能する。 こうみると足は手ほどの器用さがないものの、左右が同時にうまく動いているために動きの解釈が本当に難しい。 
本題の利き足について、ボールを蹴る足を利き足としているものの一般にはまだまだ周知されていないのが現実です。 「利き足は?」とうかがったら即返答されるような社会になってほしいものです。
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上記の写真は地下鉄のコンコース、「左側通行」とある。 わざわざ掲示しているところを見ると、この場所は事故があったか又はよく混乱する場所かもしれない。 足や靴の研究者は、駅など多くの人が交わるところは左側通行を徹底することが好ましいと語っている。 何かトラブルが発生すると人の流れが瞬時に乱れパニックになることがあるからです。 エスカレーターなどはもっと危険になる。 身体の生理に基づいた行動科学が必要という話です。 

上記の話を総合すると、利き足の反対側方向に行くほうが歩きやすいということになる。 しかし全ての方がそうとは言えないところが面倒なところである。 福井県にある永平寺本山では「左側を歩いてください」とわざわざ書き記しをしています。 ひんやりとした静かな廊下、左側を歩くと自分の気持ちがいっそう落ち着いてくるから不思議です。 昔の人は身体の生理を熟知していたということかもしれません。
シューフィッター 【大木 金次】
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2017年05月10日

高齢者の足と靴   

気持ちの良いゴールデンウィークでしたが、楽しく、過ごされましたでしょうか。
天候がいまひとつの春の始まりでしたので、桜や藤、牡丹の咲く時期も例年より遅くなりました。
電車に乗り、足元を見ると紐靴、ブーツタイプ、甲が隠れるくらいのスリッポンタイプなど、以前に比べて随分、変わってきました。
「こんな靴、あんな靴を履いていたら、いつか困るのではないかしら」と心配していましたが、いつのまにかしっかり紐を締めて靴を履いている方が増えています。
電車の路線によっても個性があるようです。
すぐ近くの電車に乗ることが、多いので、その電車で見た感想という事になります。
そして、その電車に高齢者の方の姿が減ってきているように感じます。

さて、高齢になってから、リュウマチを発症する方、以前からリュウマチであったけれど、段々、歩きづらくなった方がおられます。
当然、主治医の先生に定期的に診ていただいておられます。
特に悪くなっているのでは、ないけれど、靴が合わないという場合があります。
「痛くて履けない。」「新しい靴を作ったばかりだけれど、痛くて履けない。」と言われる事は多々あるのです。
「以前、履けた靴が履けない」
リュウマチでなくてもよく耳にする言葉です。
足の変化は、それぞれに違い、私達靴屋は勿論、ご本人にも、分かりづらい時があります。
足裏の部分が痛くて履けないという時は、中敷での調整をさせて頂くことが多いのですが、アウトソールでの加工をする事もあります。
中敷加工だけでは、痛くて履けない場合です。
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それだけではなく、靴のタン(ベロ)に厚みをつけることもあります。
高齢者の方に多いですが、体が痩せていった時、足もかなり痩せてしまいます。
体よりも先に、足が痩せていく方もおられます。
体の変化は、足にも影響しますので、ドンドン履きにくくなり、歩きにくくなる場合があるのです。
「足が、悪い」「足がよくない!」のではなく、何かできることを一緒に、探してみましょう。

技術が必要になりますが、熟練した技術者が育った頃、そろそろ退職?ということも多いようです。
技術を大切にしていく社会になれば、足の健康も体の健康も守れるはずです。
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大切に靴を触り、心地よく履いて頂くように工夫を重ねます。

シューフィッター 池川成子



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